離婚の基礎知識 knowledge

慰謝料について

慰謝料とは、精神的苦痛による損害に対する賠償とされており、男女間のトラブルに関する慰謝料としては、不貞行為による慰謝料や離婚そのものによる配偶者の地位の喪失という精神的苦痛に対する慰謝料、暴力や悪意の遺棄による慰謝料などが挙げられます。

 男女トラブルの中でも特に件数の多い不貞行為による慰謝料は、配偶者を持つ身でありながら配偶者以外の第三者と肉体関係を持つ等したときに、「婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する権利」(最三小平8.3.26)を害したとして認められるものです。最愛のパートナーが不倫をしたと知って、きちんと謝ってもらいたい、反省してほしい等のご希望をおっしゃられる方も多いですが、残念ながら反省を法律で強制することはできません。また、心の底からの謝罪を得られることは極めて稀で、むしろ一度謝罪しながらも、後々開き直ったり、不倫を繰り返す等、感情を逆なでするような行為に走るケースも少なくありません。
ですから、謝罪や反省という目に見えない形ではなく、辛い思いをされたことを金銭に換算して、目に見える慰謝料という形できちんと償ってもらうべきです。

そして、そのときの慰謝料相場は、100~300万円程度と考えられており、幅があります。慰謝料は、先に挙げたとおり、精神的苦痛という目に見えない損害に対する賠償ですから、賠償としていくら、と明確に決まるものではありません。

そのため、
・夫婦の婚姻期間や年齢、職業や収入等
・不貞行為が始まった時点での夫婦関係が円満だったかどうか
・不貞行為が始まった経緯
・不貞行為の期間や回数
等、様々な事情を踏まえて、慰謝料金額を決めていくことになります。

 このように、不貞行為によって精神的苦痛を受けたといっても、一人ひとり事情が異なりますから、不当に低い金額で示談させられないように注意しなければなりません。

 また、不貞行為をめぐっては、不倫をされた被害者だったはずが、気づくと加害者として逆に慰謝料請求をされてしまうケースも少なくありません。たとえば、配偶者Aの不倫に気付いたBさんが、Aの浮気相手であるCの自宅を訪れ、Aとの不貞行為について問いただしているうちに暴言を吐いてしまったり、暴力を振るってしまったというようなケースです。

あるいは、AとCの不倫をAの職場で暴露してしまったというようなケースもあります。これらの行為が全て常に違法になるということではありませんが、AとCの不貞行為で傷つけられた被害者の立場から、AやCを傷つけた加害者の立場に転じてしまうことのないよう、加害者との接触時には十分気を付けるべきでしょう。

まとめ

慰謝料を請求するときは、不貞行為等によって心が傷つけられたという、目に見えない損害に対して適切な損害額を算定する必要があります。また、慰謝料請求の交渉時、感情的になってしまうような場面を避ける必要もあります。
ですから、ご自身だけで悩まず、専門家である弁護士に一度ご相談されることをお勧めいたします。

婚姻費用について

別居中の夫婦の間で、夫婦や未成熟子の生活費などの婚姻生活を維持するために必要な一切の費用(婚姻費用)の分担について、当事者間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合には、家庭裁判所にこれを定める調停又は審判の申立てをすることができます。調停手続を利用する場合には、婚姻費用の分担調停事件として申立てをします。

 調停手続では、夫婦の資産、収入、支出など一切の事情について、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらうなどして事情をよく把握して、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をし、合意を目指し話合いが進められます。

 なお、話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が、必要な審理を行った上、一切の事情を考慮して、審判をすることになります。

夫婦には、民法上、同程度の生活を続けるためにお互いを扶養する義務があるとされています。
これは夫婦が別居していても同様で、夫婦である以上は、言い換えるなら離婚するまでは、収入の低いほうが高いほうに対して生活費を支払ってもらうよう請求することができます。これを婚姻費用といいます。

 弁護士として相談を受けていると、別居や離婚をしたいと考えていながらも、自身の収入が低いので経済的に無理だと考えられている方が少なくないですが、諦める必要はありません。まずは婚姻費用をきちんと支払ってもらい、経済的な不安を取り除くことです。そして、そこから離婚をした後、どのように経済的に自立していくか、ご自身のライフプランを前向きに立てていくようにすれば良いのです。

それでは、婚姻費用はいくら支払ってもらうことができるかという点ですが、当事者間の話し合いで解決するなら、特に金額の上限等はありません。それぞれが納得しているなら、自由に決めれば良いわけです。
ですが、すでに別居中である夫婦間での話し合いですから、実際には当事者間の話し合いではまとまらないケースや、そもそも話し合いすらできないケースも多くあります。

 そのような場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることになります。家庭裁判所では、まず、それぞれの資産や収入・支出等に関する事情等を考慮して、双方が納得するように話し合いを促してくれます。ですが、それでもなお双方が納得する形で話し合いがまとまらない場合(調停不成立の場合)には、家庭裁判所が一方的に婚姻費用の金額を決めてくれます(審判)。

そして、家庭裁判所では、婚姻費用の金額を決める基準として算定表というものを用いていますので、基本的には、算定表に従った金額婚姻費用の支払いを受けることができるようになります。
 ただ、注意が必要なのは、婚姻費用についての裁判所の考え方は、過去に遡っての請求を認めることについて基本的に否定的であるという点です。本来婚姻費用が必要であれば、そのとき請求すればよいだけのことで、そうできたはずであるのに請求をしなかったということは、実際にはわざわざ相手方から婚姻費用を支払ってもらうほど生活が困窮した状態にはなかったのではないかというような疑問を持たれてしまうのです。

また、婚姻費用が請求できるのは、夫婦関係にある間だけですから、離婚することに決まってから、これまでの未払い婚姻費用を請求しても、同様に、認めてもらうことは困難でしょう。
ですから、別居を始めて生活費に困っているという場合には、我慢せずすぐに婚姻費用を請求するようにすべきです。

財産分与とは

財産分与とは、婚姻生活中に、夫婦が協力して築き上げてきた財産の清算をさします。
ただし、純粋にそれだけの意味を持つものではなく、そのほかにも離婚後の生活についての扶養的意味合いや、離婚原因を作った有責配偶者に対する損害賠償的な意味合いも含むものと一般的には考えられています。

2分の1ルール

夫婦の財産をどういう割合で分けるべきかという点については、特段の事情がない限り、双方の寄与度は等しいと考えるのが一般的です。これは「2分の1ルール」とも呼ばれています。たとえば、夫が会社員で、妻が専業主婦であるというような場合、婚姻生活中は夫の給与で生活をし、夫の給与で家や車を購入していますが、夫が給与を稼げるのは妻が家事等を行って協力しているからであると考え、財産分与のときは、特段の事情がない限り、夫も妻も同じ2分の1の割合で財産を分ける、ということになります。

財産分与の対象と基準

では、実際に2分の1ずつに財産分与するとして、何が財産分与の対象になるのかという点については、それぞれの特有財産を除いた、夫婦の実質的共有財産を対象とするとされています。ですから、名義が夫名義だろうが妻名義だろうが関係ありません。また、特有財産以外は全て財産分与の対象になるので、不動産や車はもちろん、株式や保険商品、預貯金等すべてが対象となります。

それでは、財産分与の対象にならない特有財産とはどういった物を指すのかというと、①一方配偶者が婚姻前から所有していた財産や、②婚姻中に取得した財産であっても相続や贈与等によって一方配偶者が取得した財産を指す、と考えられています。

また、財産分与の対象となる財産は、原則として、夫婦の財産形成に対する協力が終了する別居時を基準として考えるものとされています。ですから、たとえば、別居時の財産分与対象財産が1000万円だったとして、別居後に夫が200万円浪費してしまったとします。この場合でも、別居時の財産1000万円を2分の1にして500万円ずつに分けることとなるはずで、夫の浪費によって200万円目減りした800万円を2分の1にする必要はありません。

うまく財産分与を行うために

離婚の危機に瀕した夫婦間では、一方配偶者が将来の財産分与に備えて計画的に財産を隠し、相手方配偶者に支払う金額を低く済ませようと画策しているようなケースも残念ながら少なくありません。婚姻生活中に築いた2人の財産をきちんと分けてもらうためには、配偶者が財産を隠したりする前に、きちんと全財産を把握しておくべきです。特に、預貯金については、少なくともどの銀行のどの支店に口座があるのかは把握しておく必要があります。離婚を考える場合は、勢いで別居してしまう前に、財産がどこにどれだけあるのか、きちんと確認されておいた方が良いでしょう。

 また、財産分与は必ずしも離婚と同時に取り決めをしなければならないものではありませんが、離婚から2年以内でないと請求できなくなってしまいます(民法768条2項)ので、注意しなければなりません。

 財産分与の対象となる財産が多いような場合や、財産分与の話し合いがなかなかまとまらないような場合は、弁護士に依頼されることをお勧めします。

離婚後の住宅ローンについて

夫婦が婚姻期間中に不動産を購入した場合、その不動産も当然に財産分与の対象になります。

 すでに住宅ローンの支払いが終わっている不動産の場合は、不動産を売却して、売却益を2分の1するか、不動産を取得する側が2分の1相当額を金銭で支払うなどして分与すればいいので、問題は多くありません。

しかし、不動産にまだ住宅ローンが残っている場合には、問題が複雑になります。
この場合も大きく分けて2つのケースがあります。
一つは住宅の現在価値がローンの残高よりも大きい「アンダーローン」のケースです。
もう一つは、住宅の現在価値がローンの残高よりも低い「オーバーローン」のケースです。

アンダーローン不動産の場合、財産分与にあたって不動産を売却してしまえば、売却益が残りますので、この売却益を2分の1ずつ分ければいいので、問題は少ないです。

他方で、オーバーローンのケースでは、住宅を売却しても債務が残ってしまいますので、この債務の負担をどうするのか、という問題が残ります。

 この点、婚姻期間中の債務についても、財産分与ではマイナス財産として考慮されますので、2分の1ずつ負担するという解決が最もスタンダードな考え方です。
 しかし、裁判所では債務の負担を対金融機関(住宅ローン債権者)との関係で命じることができませんので、裁判所を通じた解決にはなじまないものとなっております。
 残った債務については、ローンの名義人が負担することとし、その他の背一曲財産で調整していくなどの方法を考える必要があります。

以上は不動産を売却した場合についての処理です。

では、不動産にどちらか一方が住み続ける場合はどうでしょうか。
まず、不動産と住宅ローンの名義人が同一であり、かつ不動産がオーバーローンの場合には問題は生じません。
オーバーローンの不動産は資産価値がないものと考えられ、かつ名義の移転も伴わないので、別段の清算も必要ないからです。
他方で、不動産がアンダーローンだった場合には、不動産の名義人から相手に対して、不動産価値とローンの差額の半分を支払うことになるでしょう。

次に、不動産とローンの名義人ではない方が、住宅に住み続ける場合です。
この場合、不動産がオーバーローンだったとしても、名義の移転を簡単にすることはできません。
住宅ローンが残っている場合、通常、住宅の名義変更をするには金融機関の同意が必要となります。
また、住宅ローンの名義を変更するにしても、金融機関の審査を受けなければなりません。
特に、住み続ける側が専業主婦だったような場合には、金融機関の審査は下りないことが多いでしょう。
そのため、不動産とローンの名義人ではない者が住み続ける場合、そもそも、それぞれの名義を変更できるか、という問題が生じます。
 それぞれ名義の変更ができれば問題は解決されます。
 他方で、名義の変更ができなかった場合、以後の住宅ローンは誰が支払うのか、ローンを払い終わった後の不動産の名義をどうするのか、固定資産税の負担をどうするのか、という点も考えて、取り決めをしなければなりません。

親権について

親権とは、民法に定められた、子に対する親の権利と義務をまとめていうときの名称です。
民法が定める親権には、次のものがあります。

親権は、子の父母が婚姻している間は、2人で共同して行うこととされている(民法818条3項)ので、父母はどちらも親権者です。
他方、離婚する場合には、夫婦2人のうちどちらが親権者かを決めなければならない(民法819条1項、2項)ので、父母は、離婚の際には、どちらか一方が必ず親権者ではなくなってしまいます。
離婚する父母のどちらを親権者とするかは、協議離婚の場合には、まずは父母双方が話し合いで決め(民法819条1項)、協議が調わないときに裁判所が決めることとされ(民法819条4項)、裁判離婚の場合には離婚の判決と一緒に裁判所が決めることとされています(民法819条2項)。
つまり、離婚する父母の間で話し合いがまとまらなければ、裁判所が決めることになっているのです。
裁判所がどのようにして親権者を決めるのか、その判断基準について、民法は何も規定しておらず、裁判所の裁量に委ねられていますが、一般的には、父母それぞれの事情(資力、子への愛情の程度、離婚前の子との関わりの程度、子が生活することとなる環境など)と子の事情(年齢、性別、性格、成長の度合い、意思など)を総合して、子がより良い生活ができるであろうと思われるほうの親を親権者にする、と言われており、完全にケースバイケースです。
離婚の際に父母のどちらが親権者になるのか、その見通しを立てることはとても難しいことですので、離婚するにあたって親権をとりたいけれども協議が調わないという方は、離婚の分野に精通した弁護士に相談されることをお勧めします。

監護権について

民法では、父母が離婚するときには、子の監護をする者を協議で定めるとされています(民法766条1項)。
ここでいう監護をする者、監護者とは、簡単に言えば、子と一緒に生活して身の回りの世話をする者のことです。

監護者を親権者とは別に定めた場合には、親権のうち、監護教育権、居所指定権、懲戒権、職業許可権は、監護者がもつことになりますし、それらを行うのに必要な範囲で代理権をもつこともあります。

このような、監護者が親権者とは別に定められた場合に監護者がもつ権利義務を、まとめて監護権(身上監護権)と呼びます。
監護者が親権者とは別に定められても、親権者は親権を失うわけではないので、親権者にも監護教育権や居所指定権などの親権はすべてありますが、親権者の親権行使は、監護者の監護を妨げない範囲でという制限がつきます。

監護者を定めるタイミングは、一般的には、離婚する前でも離婚した後でもよいと考えられているので、必ず離婚のときに定めなければならないわけではありません。離婚のときに監護者を定めなければ、親権者が子を監護することになります。ですから、特に監護者を定めるという場合には、監護者は、必然的に、親権者以外の者、ということになります。

監護者は、離婚の際に親権者ではなくなったほうの親になることが多いですが、そうしなければならないわけではなく、子の監護に適している者であれば誰でもよいとされています。
監護者を定める協議が調わなかった場合、または、そもそも協議することができない場合には、裁判所に申し立てて、監護者を定めてもらうことができます。

親権者が監護するのか、親権者とは別に監護者を定めるのか、その判断基準については、親権者を父母のどちらにするかということと同様に、民法には何も規定がなく、裁判所の裁量に委ねられています。一般的には、やはり子の利益を中心に、親権者と監護者のそれぞれの事情(監護に対する意欲や能力、健康状態、経済力、環境、子とのこれまでの関わり方など)、子の事情(年齢、性別、性格、成長の度合い、意思、兄弟姉妹があればその監護の状況など)など、様々な事情を考慮して、総合的に判断すると言われています。

実際の例では、それまでの子の監護の現状維持を重視する考え方、子が乳幼児である場合に母親の監護を優先する考え方、子がある程度の年齢の場合に子の意思を尊重するという考え方、兄弟姉妹を分離すべきではないという考え方、監護者でない親に対する面接交渉に寛容であることを重視するという考え方などがあります。
つまり、完全にケースバイケースということになりますので、監護者の指定を裁判所に求めたときに、監護者になれるかどうかの見通しを立てることは、とても難しいことです。ですから、監護者の指定を裁判所に求めることを検討されている方は、一度、離婚の分野に精通した弁護士に相談されることをお勧めします。

面接交渉(面会交流)について

父母の婚姻関係が破綻したり、父母が離婚したりした結果、子の監護をしないこととなった親と子が交流することを、特に面接交渉(面会交流)といいます。

面接交渉は、子と離れて暮らす親が、子と一緒に生活しているほうの親に対して求めることがほとんどですが、本質的には、子を自分に会わせる権利というよりは、子のために適切な措置をとることを求める権利であると考えられており、その根底には、子の利益の観点、すなわち、子にとっては、離れて暮らす方の親と交流することも成長や精神の安定などのために必要である、という考え方があります。

民法では、父母が離婚するときには、「監護について必要な事項」を協議で定めるとされていて(民法766条1項)、面接交渉に関することは、この「監護について必要な事項」に含まれるものとして扱われています。ですから、父母が離婚するときには、面接交渉に関すること、つまり、いつ、どこで、どのくらいの頻度で面接交渉するのか、面接の際に第三者が立ち会うのかなど、具体的なことを、まずは協議して決め、協議がととのわない場合、または、協議ができない場合には、裁判所が決めることとされています。

面接交渉に関する具体的な事項を決めるタイミングは、一般的には、離婚する前でも後でもよいとされています。ですから、たとえば、婚姻中の父母が別居していて、子が母親と生活しているという場合には、まだ離婚はしていませんが、面接交渉については、父親が母親に対して協議を求めることができますし、協議がととのわない場合には裁判所に決めてもらうことができます。

子の監護者でない親の面接交渉を認めるかどうか、その具体的な基準は、民法には定めがありません。一般的には、面接交渉権が子のための権利であることから、子の事情(年齢、心身の状況、意思など)や監護者と非監護者の事情(双方の協力の可能性、信頼関係の程度、面接交渉の目的、双方の居住地など)を総合したうえで、子の利益をもっとも優先して考慮し判断するとされています。もっとも、離れて暮らす方の親と交流することが通常は子の成長や精神の安定のためになる、という考え方が根底にありますから、面接交渉を命じるか否かが問題となる実際の事案では、面接交渉が子の利益にならない事情が特になければ、面接交渉が認められることも多いです。

面接交渉が子の利益にならない事情として認められて実際に面接交渉が認められなかったケースとしては、ある程度の年齢になった子が明確に面接交渉を拒否していたケース、過去に子に暴力をふるったり子を奪取したりしたことがあったケース、離れて暮らす方の親が覚せい剤常習者で反社会的・反倫理的な生活態度がしみついているとされたケース、過去に父母間で暴力があったケース、離れて暮らす方の親が正当な理由がなく養育費を支払わなかったケースなどがあります。

面接交渉が認められたにもかかわらず、監護者の親がそれを妨害した、という場合に、面接交渉権をもつ親がとりうる手段としては、色々な考え方がありますが、最近では、裁判所が、妨害する親に対して、面接交渉に応じるまで1日あたり数千円という金銭の支払いを命じた例があり、注目されています。

実際に面接交渉が認められるかどうか、面接交渉を妨害された場合にどうするかなど、面接交渉には難しい問題が多いので、離婚後の子との面接交渉について詳しく知りたいという方は、一度、離婚の分野に精通した弁護士に相談されることをお勧めします。

養育費につきまして

民法は、親に子の扶養を義務づけています(民法877条1項)が、特に、親は、未成年の子に対しては、親と同等程度の生活水準を維持させる義務があるとされています。

父母が子と一緒に生活する場合には、この義務に関しては基本的には問題は生じませんが、父母が離婚し、一方の親が未成年の子と離れて暮らすことになると、離れて暮らすほうの親は、この義務を果たすために、子の生活のための費用を支払わなければなりません。
この費用が、一般的に養育費と呼ばれるものです。

民法では、父母が離婚するときには、「監護について必要な事項」を協議で定めるとされていて(民法766条1項)、養育費に関することは、この「監護について必要な事項」に含まれるものとして扱われています。ですから、父母が離婚するときには、養育費の額などの具体的なことを、まずは協議して決め、協議がととのわない場合、または、協議ができない場合には、裁判所が決めることとされています。
養育費の額は、家庭裁判所が算定表を公表していて、基本的にはこの算定表に沿って、月額いくらという形で決まります。算定表は、簡単に言えば、父母の収入の合計額から、そのうち子の生活費にかけるであろう額を割り出して、それを父母それぞれの収入の額に応じて按分する、という考え方で作られています。

養育費をいつまで支払う義務があるか、という点については、子ごとに個別に判断され、年齢などで一律に決まっているわけではありませんが、概ね子の年齢が10歳代後半から20歳代前半くらいまでの間で決まります。では、いったん決まった養育費の額や支払いの期間は、子がそのくらいの年齢になるまで変わらないのか、というと、そういうわけではなく、裁判所に申し立てをして認めてもらえれば、その額や期間を変更してもらうことができます。具体的には、収入の変化や、再婚、別の子の誕生などの父母側の事情、結婚や就職などの子側の事情などから、変更を認めるべき事情変更があったと認めてもらえれば、裁判所により変更されることになります。

養育費の支払いの額や期間については、たとえば、父母の間で養育費をずっと0円とするというような合意があっても、子は、そういう合意したわけではありませんから、別途、離れて暮らす親に対して、扶養料として、適正な額を適正な期間、請求することができるとされています。
養育費が約束どおりに支払われない場合には、養育費の支払い義務者の財産を差し押さえたりすることのほか、裁判所から、支払いを勧告してもらうことや、支払われるまで養育費とは別に1日数千円という金銭の支払を命じてもらったりすることができる場合があります。
離婚の際に養育費に関する協議をせず、離婚して別居してから全く養育費が支払われていない、という場合に、別居した時点など、過去に遡って計算した養育費を支払わせることができるかどうか、という点については、それが認められた例もありますが、基本的にはそれは認められず、請求した時点から支払わせることができるにすぎないとされています。

養育費については、その額や支払いについての悩みがあっても、元配偶者と関わ合いたくないなどの理由から、結局何もしないでおく方が多いように思われます。しかし、それでは損をしてしまうかもしれませんし、それではお子様のためにも良くありません。養育費に関してお悩みの方は、一度、なるべく早く、弁護士に相談されることをお勧めします。