「コロナ離婚」について(前編)
コロナウィルスの世界的な蔓延により外出自粛が要請され、緊急事態宣言が出されるなど社会的に大きな変化が生じたことに伴って、「コロナ離婚」という言葉が聞かれるようになりました。
中には「コロナ離婚」という言葉は聞いたことがあるけれども、コロナウィルスと夫婦関係がどう関係するのか分からない、コロナ離婚とはどういう事象を指すのか分からないという方も多いかと思います。
コロナ離婚という言葉はコロナウィルスの感染拡大に関係して同時並行的に増加している離婚問題を総称する言葉であり、明確な定義があるわけではありません。
ただし、この「コロナ離婚」という現象は夫婦間の核心的な問題がコロナウィルスの感染拡大をきっかけに顕在化したものとして特徴的な性質を備えております。この「コロナ離婚」は離婚事件を多く扱う弊所でも大変大きな社会問題になっているものと認識しております。
そこで、本記事では、前編と後編の2回にわたって、
1 コロナ離婚とはなにか
2 コロナ離婚と呼ばれる現象を理由に実際に離婚することが出来るのか
3 離婚に向けた具体的なアクション
について、弊所が扱った事例を参考にしながら解説してまいります。
1 コロナ離婚とは何か
コロナ離婚とは、コロナウィルスの感染拡大に伴う生活環境や社会環境の変化により夫婦が離婚に至る又は離婚を考えるに至っている現象です。
例えば以下の例があげられます
① コロナウィルスの感染拡大防止のために外出自粛要請が出されているなかで価値観の相違が顕在化する
② 外出自粛、テレワークの推進により、夫婦で一緒にいる時間が長くなることで価値観、性格の不一致を認識するようになった
③ 外出自粛要請、緊急事態宣言、営業自粛や休業に伴う収入の減額によるストレスからDVやモラハラに発展する
④ 収入の減少に伴う経済不安からくる夫婦不和が生じる
⑤ 実際に生命の危機を感じる感染拡大を目の当たりにしたことで、配偶者と添い遂げることに不安や抵抗を感じるようになる
というケースが挙げられます。
もう少し詳しく①から⑤について説明をしていきます。
まず、①については、例えば夫婦の一方は家族、親戚や友人をコロナウィルスの感染から守るために、外出を自粛しよう、手洗いや消毒を徹底しようとしているのに、他方配偶者はそこまでの危機意識を持たず、外出してしまう、友人と会う、いつも通り出勤する、実家に遊びに行く等することで顕在化する価値観の相違です。
コロナウィルスの重症化リスクはそこまで高くないと言われていることや、日本での感染は諸外国に比べて比較的抑えられていることから、感染リスクに対する危機意識は個人個人で大きな差があります。
しかし、命がかかった問題であることから、この危機意識の差が大きな価値観の差となり、離婚を意識するようになります。
この事象がコロナ離婚を最も象徴するケースであり、看過できない価値観の相違になっております。
次に②ですが、これは単純に一緒にいる時間が増えたことで、性格の不一致を認識することにより、離婚に至るケースです。
普段一緒にいない日や時間を一緒に過ごすことにより、例えば家にいるのに家事を手伝おうとしない、会話を通じて価値観が合わないと感じる等により、離婚を意識するようになります。
これまでは性格の不一致を感じつつも、平日や日中は同じ時間を共有しないことで夫婦関係を継続してくることができた夫婦が、多くの時間を共有することにより、我慢の限界を迎えてしまうというもので、元々あった性格の不一致が、コロナウィルスの蔓延に伴い顕在化した事象といえます。
続いて③ですが、これが最も深刻なケースとなってしまっております。
元々DV気質、モラハラ気質があった人(顕在化していなかった人も含みます)が、外出自粛やコロナウィルスによる異常事態の終息がみえないストレスにより、攻撃的な性格が表面化してしまい、それが配偶者に向かってしまいます。
そして、これは非常に多いケースとなっております。
この問題の深刻なところは、外出自粛要請により自宅を出ることができない、または、配偶者が常に同じ空間にいることから外に助けを求めることができずエスカレートしてしまう傾向にある点にあります。
次に④、これは収入の減少により、夫婦が互いに気持ちの余裕がなくなり口論をすることが多くなってしまう、家庭の雰囲気が著しく悪化するないしは生活苦から借金をしてしまい、生活基盤が脅かされ、やむを得ず離婚という選択をせざるを得なくなってしまうケースです。
このケースは現時点でもご相談をいただくことはありますが、世界的な経済状況の悪化により、今後ますます増加してくるものと思われます。
最後に⑤ですが、明確にこれという出来事がなくとも、コロナウィルスの感染拡大に伴い生活が変化していくなかで離婚を意識するようになるケースも非常に多くなっております。
コロナウィルスの感染拡大という生命を脅かす危機に直面したことで、自分の人生を見つめ直し、このままこの人と結婚生活を継続していくべきなのかどうか、ということを考え離婚に至るケースです。
これは、一緒にいて楽しくない、この人と夫婦でいることがなんか違う気がするという程度から同じ空間にいることに耐えがたい苦痛を感じるという程度まで様々です。
大きく分けると性格の不一致ということになりますが、コロナウィルスの感染拡大により認識するようになる又は認識を強める方が多くなっております。
2 コロナ離婚と呼ばれる事象を理由に離婚することが出来るのか
裁判上の離婚原因として民法770条1項は、1号配偶者に不貞な行為があったとき、2号配偶者から悪意で遺棄されたとき、3号配偶者の生死が三年以上明らかでないとき、4号配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、5号その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときと定めております。
そして、上記いずれのケースも1号から4号にはあたりませんので、5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるのか、という点が問題となります。
①から⑤のうち、③DVと呼ばれる暴力が5号に当たることに異論はありません。
また、同じく③のモラハラもそれが立証(証明)できれば5号に当たるものと解されております。
他方で、①②④⑤については大きく分けると性格の不一致にカテゴリーされるものであり、直ちに裁判上の離婚原因となるものではありません。
しかし、当事務所で扱っている離婚事件の多くは明確な裁判上の離婚原因がないケースであり、そういったケースでも実際に離婚が成立しております。
性格の不一致が裁判上の離婚原因として認められないからといっても、性格や価値観が一致していることは円満な婚姻関係を続けていくために最も重要なポイントです。
そのため、この点について不一致を感じたままで婚姻関係を続けていくことはとても辛いものであり、お互いにとって不幸です。
また、裁判上の離婚原因があるのか、という点が問題となるのはあくまでも裁判になった場合に、その離婚の訴えが裁判所により認められるのか(認容されるのか)という場面でのことであり、裁判の前段階である協議や調停の場面では厳密に法的な離婚原因がなくても離婚が成立しているケースは多くあります。
当事務所で扱っている多くの離婚事件でも、明確な法律上の離婚原因ではないが、価値観や性格の不一致という婚姻関係の根幹のずれを理由として離婚という解決に至っております。
ただし、明確な法律上の離婚原因がないケースで離婚を求めたとしても、感情的な対立を深めてしまい、問題が複雑化してしまったり、明確な離婚原因がないことを逆手にとられて不利な条件で離婚の合意にいたってしまったりすることがあるなど、注意して進めなければなりません。
そのため、「コロナ離婚」のなかで明確な離婚原因がないが、離婚をしたい、離婚すべきか悩んでいる方についてはまずは離婚問題を豊富に扱っている弁護士に早めに相談されることをおすすめいたします。
後編では、「コロナ離婚」についての3.離婚に向けた具体的なアクションを解説いたします。
弊所では、離婚事件に関するこれまでの豊富な実績から、「コロナ離婚」に関するご相談にも的確なアドバイスをすることが可能です。ご相談は初回1時間まで無料です。ご相談をご希望の方は、離婚相談予約専用ダイヤル0120-543-125にお電話いただくか、こちらのお問い合わせフォームからご連絡ください。
なお、緊急事態宣言下での外出自粛により、ご相談にいらっしゃることができない方については、お電話でのご相談やメールでのご相談にも対応しております(一部対象外があります。)。電話相談やメール相談をご希望の場合は、予約時のお電話やお問い合わせフォーム内でその旨をお伝えください。(なお、電話相談・メール相談は、コロナウイルス感染拡大防止のための期間限定サービスのため、お問い合わせ時、終了している場合がございます。)
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