<事案>

相談者は60代の女性です。
相談者は20代半ばで最初の結婚をして長女をもうけましたが数年で離婚し,30代後半の時に現在の夫と再婚しました。現在の夫との間に長男をもうけ,家族4人で暮らしていましたが,長女が夫から継続的に性的な嫌がらせを受けていたことを成人後に打ち明けられました。
相談者は離婚するかどうか悩んだものの,長男がまだ小学生でこれからお金がかかる時期であり,自分が専業主婦であって経済面で不安が大きかったため,離婚には踏み切れず,長女に別居してもらう形で解決を図りました。しかし,夫からの被害が原因で長女が長期間にわたって精神疾患を抱えて治療に専念しなければなくなったことから,夫がしたことの影響の大きさを年々実感するようになり相談者は再び離婚を考え始めました。
夫婦仲も次第に悪化していき,夫から十分な生活費を貰えなくなったこともあり,長男が大学を卒業して独立したのを機に,相談者は離婚を決意し,弁護士に相談することにしました。

 

 

<解決>
依頼後,まずは別居と婚姻費用の支払いを求めるところから始めました。
相談者と夫は,相談者名義の土地の上に共有名義の建物を建てて同居しており,離婚した後は相談者が取得を希望していたことから,夫に出て行ってもらう形で別居の交渉を始めました。
夫は長女に対する性的虐待の事実は認めませんでしたが,別居や婚姻費用の支払いについては全く争わず,弁護士介入後1月ほどで転居して婚姻費用の支払いも始まりました。
その後,離婚に関する具体的な協議を始めようとしたとき,夫に代理人がつき,代理人間での任意交渉を行うことになりました。相談者が長女に対する性的虐待を訴えているためか,夫の代理人からは,できるだけ協議でまとめたいという意向を伝えられました。
離婚自体には争いがなかったものの,財産分与の方法や慰謝料の支払いが主な争点となりました。
財産分与の対象となる主な財産は自宅建物と夫の退職金であり,相談者は夫婦共有名義の建物の取得を希望していましたが,夫名義で組んだ住宅ローンが数年まだ残っていたため,離婚後にどちらが住宅ローンを支払うかが問題になりました。
夫側からは相談者が取得するのであれば離婚後は全額相談者が支払うよう求められましたが,相談者は就業の見込みもなく長男の大学費用を相談者が全て負担して貯金も底をついていたため,住宅ローンは夫に全額支払ってもらう必要がありました。

その一方で,自宅に次いで大きな金額となる夫の退職金については,退職までまだ数年あり実際には相当額が手元になかったため,離婚時に一括で精算できないという問題を抱えていました。
そのため,財産分与については夫が自宅ローンを完済した上で持ち分を相談者に譲渡するという形で決着することになりました。ローンの残額だけでも財産分与の対象となる退職金の金額を数百万円上回っていましたが,事実上長期の分割払いになることや,任意交渉で話をまとめたいという夫の意向もあって,夫側が大きく譲歩をしました。
慰謝料については,夫が相談者の主張を全否定していたため,慰謝料としての支払いを最初から拒否してきました。しかし,相談者としては,夫に事実を認めて謝罪してもらい,幾らかでも現金を受け取って長女に渡したいという気持ちが強く,粘り強く交渉することになりました。
結果として,本件離婚の解決金という形ではありましたが,財産分与とは別に300万円を一括で支払うということになり,事実を認めて謝罪してほしいという相談者の希望が遠巻きながら叶うことになりました。

 

 

投稿者: ガーディアン法律事務所