生活費の補填として使用していた特有財産が問題になった事案
<事案>
相談者と夫は8年前に結婚しました。相談者は二回目の結婚で,当時中学生の長男がおり今後学費がかかる時期であったため再婚には慎重でしたが,夫から長男の教育費については自分が負担するから心配ないと説得されたこともあり,再婚することにしました。
夫の仕事が忙しく,相談者が主に家事をすることになったので,収入は下がることになったものの,再婚後しばらくして相談者は転職しました。
夫は,長男の高校の学費については約束通り全額支払ったのですが,大学進学に当たっては,自分は出すことができないから奨学金を利用してほしいと言い出しました。また,退職の時期が近付いてくるにつれて,退職金で自分一人が住むマンションを買うという話を具体的にし始め,生活費も十分に支払わなくなりました。退職金を含めた夫婦の収入で老後の生活設計をしていたため,相談者は当初離婚についてそこまで積極的ではありませんでしたが,このまま婚姻関係を続けていても夫が自分の収入を気ままに使い果たしていくだけだと気づき,相談者は弁護士に相談することにしました。
<解決>
退職金が実際に支給された後では財産を確保するのが難しいのではないかという懸念があったため,弁護士介入後速やかに夫に離婚の申し入れをしたところ,夫もすぐに代理人をつけ,離婚に向けた交渉が始まりました。
交渉を開始したところ,退職金に関してはさほど大きな争点にならず決着がつく見込みがたったのですが,双方の婚前の財産(特有財産)が主な争いになりました。
再婚後相談者が転職して減収したため,双方が婚前から持っていた財産を生活費として適宜補填して使っていたという事情があり,特有財産といえる範囲が問題になりました。
最終的には残存しているもののみを特有財産として,財産分与の対象となる共有財産から外し,退職金を含めて財産分与を行うこととして離婚成立となりました。
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